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国チャレ 第165回

("03年9月8日 出題 / アクセス数 471)

※ 答案提出は 2回まで とさせていただきます。

  次の文章の空欄 ( 1 )( 3 ) にあてはまる語を、それぞれの選択肢から1つずつ選べ。

(1) ア.必然性  イ.文化度  ウ.偶然性  エ.均質性  オ.緊密度

(2) ア.宿命的  イ.蓋然(がいぜん)的  ウ.神秘的  エ.恣意(しい)

(3) ア.私有物  イ.被保護者  ウ.代替物  エ.複製品


  人間は他の人間と自由にまじわることができる。あるいは、まじわる相手を自由にえらぶことができる。学校の友だち、職場での友人、恋人、そして夫婦でさえも、それぞれの当事者の自由な選択によって成立している人間関係だ。

  相手方に誰をえらぶかは、ある意味では自由であり、べつな見方からすれば偶然である。ふとめぐりあい知りあった人びと − その人びととわたしたちはつきあって生きている。仲よくなれば一生をつらぬいた、親しい友人関係をとりむすぶこともできようし、けんかをして、それでお互いふたたび顔をあわせない、といったようなことになるかもしれぬ。

  とりわけ、現代のように、都市化がすすみ、( 1 ) の高い社会では、人間関係は、ふと結ばれ、そしてふと消えてゆく一時的なものであることが多い。学校の友人にしても、それは卒業後数年間で、いつのまにかごぶさたになってしまう。すくなくとも、そのような人間関係では「ごぶさた」が、ゆるされるのである。

  しかし、そのように自由な人間関係のなかで、ひとつの例外がある。それは、血縁の関係、とりわけ親子の関係である。友人だの隣人だの夫婦だのは、「えらぶ」ことができるが、親子関係だけは、「えらぶ」ものではない。人が生まれた瞬間に、親子の関係は ( 2 ) にあたえられてしまっている。こればかりは、誰にも、どうにもならない。

  そのうえ、人間という動物は養育期間がながい。「親がなくても子は育つ」というのも真実だけれども、親がわりになるおとながいなければ人間の乳幼児は死んでしまう。そして、ふつうのばあい、子を育てるのは親である。親子というのは、人間にとって、のっぴきならない関係なのだ。自由にみちあふれた現代の人間関係のなかで、親子だけは、まったく別枠の関係なのである。そこでは、人間関係一般についてのさまざまな原則はあてはまらない。どんな社会、どんな時代にも、こういた特殊関係としての親子関係は生きつづけ、そのことによって、人類の歴史はつづりあわされてきた。そして、ついにこのあいだまで、そういう親子関係は、ごく自然なものとして誰もがうけいれていた。

  しかし、現代のひとつの特徴は、親子という関係が「問題」化してきた、ということであろう。むかしのように、親子は自然なスムーズな関係ではなくなってきたのだ。新聞の身上相談などを見ても、親子「問題」がぐんとふえてきた。いわく、どうやって子どもを育てたらいいのでしょう。いわく、親がわたしを理解してくれません、どうしたらいいでしょう。…… 親子のあいだには、あきらかに、深い溝がうまれてきている。

  なぜ親子が「問題」化してきたのか。いくつもの理由をあげることができる。

  まず第一に、変化する社会のなかで親と子の経験がまったく異質化してしまった、という事実に注目したい。かつて、社会が「伝統」社会であったとき、親と子は、おなじ経験を共有していた。子を育てながら、親は、じぶんが子どもだったころのことを回想することができたし、その子どもをこれからどんなふうに育てていったらいいか、についても確信をもつことができた。

  どんなふうに子どもを育てたらいいのでしょう、といったような疑問は、伝統社会の親からみれば、想像を絶している。子どもの育て方 − それは、きわめて簡単だ。じぶんが育てられたのとおなじように育てればよい。それだけのことなのだ。じぶんの子どもは、将来、じぶんとおなじようになるだろう、と親は考え、また、子どもは、親とおなじような人間になりたい、と考えた。いわば、そこでは、子は親の「( 3 )」だったのである。

  ところが、現代社会での様子はだいぶちがう。おむつのあて方、授乳の仕方までが、ひと時代まえとすっかりかわってしまった。親は、じぶんが子どもだったときの経験を思い出してそれによって子どもを育てるのでなく、育児書をひもといて子どもを育てる。乳児経験の段階から、親子のあいだには、大きな落差がつくられているのだ。

  社会が進歩し、変化するかぎり、この落差は避けられない。子どもは親とちがった存在になる。そして、この落差から、さまざまな問題が派生してゆく。完全な保護者・教育者としての親と、完全な被保護者・生徒としての子、という安定した関係はグラつき、親子のあいだには、一種の緊張関係がうまれてゆく。

  こうした緊張関係を、親は人為的につよめてゆく。じぶんは十分な教育をうけることができなかった。だからせめて子どもには高等教育をうけさせてやりたい − 親は、そう思う。そして、そう思った瞬間から、子は、親とちがうあらたな世界にとびこんでゆく。

  明治以来、これまで百年の日本の親子の歴史は、そのようにして親とちがった道を歩む子の歴史であった、といってもよい。

(加藤秀俊『暮しの思想』)

(補足) 最も適切な語をお選びください。m(..)m


解答

(1) ウ  (2) ア  (3) エ


成績優秀者

着順ハンドル素点答案到着時間
 みぞにゃん さん100+ 9/ 8, 23:12.38
 みかん さん100+ 9/ 8, 23:12.42
 ひでゆきボン さん100+ 9/ 8, 23:14.43
 辻。 さん100+ 9/ 8, 23:15.04
 集中豪雨 さん100+ 9/ 8, 23:19.08
 LION さん100+ 9/ 8, 23:22.53
 CRYING DOLPHIN さん100- 9/ 9, 00:00
 フィリピンの鷹 さん100- 9/ 9, 00:46
 とらいしくる さん100+ 9/ 9, 00:59
10 かんな さん100+ 9/ 9, 01:09
11 zizi さん100+ 9/ 9, 15:39
12 tomh さん100+ 9/ 9, 17:58
13 圭太 さん100- 9/ 9, 23:53
14 Row at BKK さん100- 9/ 10, 00:00
15 川村高雅 さん100+ 9/ 12, 12:46
16 小杉原 啓 さん70 / ××(1) 9/ 8, 23:13.44
17 teki さん70 / ××(1) 9/ 8, 23:16.30
18 トシえもん さん70 / ××(1) 9/ 9, 18:00
19 Tealow さん70 / ×(1) 9/ 10, 22:33
20 Kenji さん70 / ×(1) 9/ 12, 12:46
21 Haru さん70 / ×(1) 9/ 19, 22:47
22 さやかママ さん70 / ×(1) 9/ 20, 21:15

 (参加 23名 / 9月20日 確定)


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Author: Mikitty
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