国チャレ　第168回

("03年10月11日 出題 / アクセス数 194)

　　次の文章を読んで、あとの問いに答えよ。

　　いづれの御時(おほんとき)にか、女御(にようご)、更衣(かうい)あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあら (2) [ぬ] が、すぐれて時めきたまふありけり。初めより我はと思ひ上げりたまへ (3) [る] 御方々、めざましきものにおとしめそねみたまふ。同じほど、それより下臈(げらふ)の更衣たちは、まして安からず。朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやあり (4) [けむ]、いと篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、いよいよ飽かずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえ憚(はばか)らせたまはず、世の例(ためし)にもなりぬべき御もてなしなり。

　　(5) [上達部]、上人(うへびと)なども、あいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御覚えなり。唐土(もろこし)にも、かかることの起こりにこそ、世も乱れ、悪しかりけれと、やうやう天(あめ)の下にもあぢきなう、人のもて悩みぐさになりて、楊貴妃(やうきひ)の例も引き出でつべくなりゆくに、いと (6) [はしたなき] こと多かれど、かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて交じらひたまふ。父の大納言は亡くなりて、母北の方なむ、古(いにしへ)の人の由(よし)あるにて、親うち具し、さしあたりて世の覚えはなやかなる御方々にもいたう劣らず、何ごとの儀式をももてなしたまひけれど、とりたてて (7) [はかばかしき] 後見(うしろみ)しなければ、事とある時は、なほよりどころなく心細げなり。

＜現代語訳＞　(設問に関わる部分は略)

　　どの天皇の御代(みよ)であったか、女御や更衣が大勢お仕えなさっていた中に、それほど高貴な身分ではないが、格別に天皇の御寵愛を受けていらっしゃる方がいた。(宮仕えの) 初めから、自分こそはと自負していらっしゃる女御の方々は、(その人のことを) 目に余るものとしてさげすみ嫉んだりなさる。(その人と) 同じくらい、あるいはその人身分の低い更衣たちは、なおさら心穏やかでない。(こうして) 朝夕の宮仕えに際しても、他人の心をかき立てるばかりで、一身に恨みを受けることが積もり積もったためであったからだろうか、ひどく病気がちになっていき、何となく心細げに里に帰ることが多いのを、(天皇は) ますますたまらなくいじらしいものとお思いになって、他人の非難に対してご遠慮なさることもおできにならず、世間の噂にもされそうなおもてなしようである。

　　公卿(くぎょう)や殿上人なども、わけもなく目をそむけなどしつつ、とても眩しいほどの御寵愛ぶりである。中国でも、このようなことが原因で、世の中が乱れ、悪くなったと、しだいに世間でも、情けないことだと、人々の悩みの種になっていき、楊貴妃の例までも引き合いに出しかねない成り行きなので、たいそう ＊＊＊＊ ことが多いけれども、(更衣は) おそれ多い天皇の類のない情けを頼りにして、宮仕えをしていらっしゃる。(更衣の) 父である大納言は亡くなっていて、母 (である大納言の) 北の方は、昔かたぎの人で由緒ありげな人であるので、両親ともそろい、現在世間の評判も華やかな他の人々にもそれほど劣らず、どんな事柄の儀式もなさっていたが、特にこれといった ＊＊＊＊ 後ろ盾の人がいないので、いざという大事なときには、やはり頼りどころがなくて心細そうである。

Ａ．(1)　この文章「桐壺」を含む文学作品の名前を記せ。(10点)

Ｂ．(2)〜(4) の助動詞の終止形をそれぞれ記せ。
　文章中の語が最初から終止形である場合は、そのまま記せばよい。(各10点)

Ｃ．(5)「上達部」の読みをひらがなで記せ。(20点)

Ｄ．(6)〜(7) の意味を、それぞれの選択肢から１つずつ選べ。(各20点)

(6)　はしたなき
　ア．普通である　　イ．やつれている
　ウ．身分が低い　　エ．いたたまれない

(7)　はかばかしき
　ア．親しい　　　イ．ふさわしい
　ウ．まじめな　　エ．しっかりした

解答

(1)　源氏物語　　(2)　ず　　(3)　り　　(4)　けむ
(5)　かんだちめ (かんだちべ)　　(6)　エ　　(7)　エ

成績優秀者

　(参加 16名 / 10月18日 確定)

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